企業でDX推進するにあたり、データ利活用・人材育成が常にセットで内部環境面での課題になるが、医薬品業界のおける施策の例(パーソルテンプスタッフ株式会社)が日経サイエンスにあった。
業界課題
- バイオ医薬品の重要性が向上し、世界の売上高トップ10のうち7つがバイオに
- 理化学メーカーへの人材派遣の2~3割はバイオ(細胞)人材
バイオ医薬品の45%が動物細胞による製造であるためか - 企業にはバイオ医薬品のモノづくり現場で活用できる産業人材が不足
対応方針
- 大学の共同研究講座・研究所制度を活用し、産学共同研究による産業人材育成
- 学びの場が多様な欧州に倣い、学習履歴・論文ではなく、知識・スキル・職能といった指標で産業人材を評価
- 変化の激しいバイオ医薬品のものづくり現場で働く人たちの多様なスキルを可視化・評価し、本人・会社にフィードバックすることで高度な産業人材によるチームワークを可能とする
論点
- 今後バイオ技術がさらに進展したとき、グローバルで活躍できるバイオ技術者・研究者のキャリアはどうなるのか
- 能力を発揮してもらうためにはどうしたらよいか
- 細胞培養に必要なサイエンスの知識の育成
メカニズム、予測数理モデルなど手法、ベクター、バイオリアクター設計
施策
- 大学教授の協力を得て、細胞培養に必要な知識・スキル・職能を分析する項目(KGI)を明確にする
- 3点の評価項目で人材・企業に不足するものは何か、どう学ぶべきか(KPI)を提示する
- 人材派遣会社のバイオ人材を評価し、学内外の学習プログラムを適用することによってどう改善するかを実際に評価する(アクション)
パーソル高度バイオDX産業人材共同研究所の取り組み
提案の方向性
人材派遣会社は、知識・スキル・職能を評価する仕組みは自社システムとして既に保有しており定常的に運用しているので、バイオ人材に必要な評価項目を特定するところまでやれば十分なのだろう。
民間企業は、
- 人材開発部門が官僚化しており、変化する現場で新たに必要な人材像の定義やスキル定義を自分たちでは出来ない。本来プロのはずなのにアマ。
現場の部門長レベルに依頼して定義させてみたりするが、現場の部門長は業務はプロでも人材開発は素人であるため出来映えはまちまち。
定義しても別段、人事施策(報酬・採用等)にも生かされないと分かっているので、一度作ったらそれきりで、古いまま長年放置 - そもそも企業内の人材についてデータ化されていないので、計画的な育成なり採用なりに繋げる仕組みも当然ながらない。教育予算が部門予算になっており部門損益に影響するので外部から講座を購入したり有償セミナー受講させたりもない。そのため育成は完全に現場のOJT任せとなる
- 人材評価のソリューションを導入していても、運用は成り立っていない
人材開発部門が中身の精査をすることなく、部門ごとにスキル定義させたものをただ単に「とりまとめ」(Excelファイルを思考せずにマージすることをいう)た結果、同じスキルが似たような違う独自名称でデータ登録されてしまい、全社横断で見ると使い物にならない。依頼した当の人事部門すらも、採用・評価に使わない。 - 登録したところで、それに合った仕事が来るわけでもなく、他部門の優秀な要員を引き込めるわけでもない。縦割りの現場にとって何の役にも立たないため、初期データ登録だけはされるが、更新はされない。
といった状況にある。
アドホックに人材を集めるプロジェクト型の仕事が多い企業や部門では人材開発部門自体を変革する要件があるが、決まった仕事をリピートするライン型の仕事が多い企業や部門では人材開発部門がないことも多く、引き続き現場のOJT任せとなり要件はないだろう。
参考文献
研究者を学習履歴・論文で評価する文化に依存した学術出版のビジネスモデル