そういう、モデルなんです。

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Blender 3.3 で髪がメリ込まないように生やすカンコツ

先日リリースされた Blender 3.3 LTS では髪や髭をカーブオブジェクトで生やすことが簡単になる機能強化が行われた。

現在のところ不便な点としては、髪と頭の間に衝突判定とかはないので、髪を櫛で撫でつけると頭蓋骨内に髪がメリ混んでしまうため手戻りが多いことだ。

衝突判定をつけることはできないようなので、めり込まないようにしながら髪を生やす作業のカンコツをここに記す。

How to grow hair in Blender 3.3

The recent release of Blender 3.3 LTS has some enhancements that make it easier to grow hair and beards with curve objects.

Currently, the inconvenience is that there is no collision detection between the hair and the head, so if you comb through the hair, the hair will get stuck in the skull and you'll have to rework a lot.

Since it does not seem to be possible to add collision judgments, I write here the trick of the work of growing hair while trying not to get stuck in the skull.

植毛フェーズ:毛根のある部分を狙って、正しい長さの毛を生やす

何を当たり前な、と思うかもしれない。

毛を生やすブラシの大きさを頭部と同じ位の大きさにして、髪の本数をかなり大きな数に増やし、マウス左クリックすると頭の中心あたりから放射状にタワシのように長い毛がかなり沢山生えるので、それを櫛で撫で付けたり、長さを調整すれば何とかなるはずだ…そう思っていた時期が自分にもありました。

櫛などの編集ツールは、実際の櫛に近いように設計されているようなので、毛根がないところに毛を生やすとワケが分からなくなる。

したがって以下のようにする方がよい。

  • 頭部のうち、毛根がある部分を狙って、毛を生やすブラシで植毛する
  • 頭部以外のメッシュは非表示にする
  • 髪の長さはブラシの設定で、実際の長さに近い長さに設定する
    • 短髪の場合、もみあげなど髪が短いはずの部分では、長さは短くする。
      2~4cm 位が適切だろう。あまり短くすると櫛が利かなくなる。
    • 短髪の場合、前髪/頭頂部/後頭部では長くする。
      6cm以上が適切だろう。
    • 長髪の場合、既定の 30cm のままが適切だろう。
  • アクティブツールで対象 - ミラー X をオンにする
    左右どちらか半分に植毛すれば反対側にも髪生える。左右対称の髪形を作る場合には、ミラー X をオンにすると生産性がとても上がる。

    • 正面から前髪を生やすときに Y もオンにすると後頭部も同時に生えるので、オフにしておくこと。

    • 後面から後ろ髪を生やすときには Y をオフにしないと顔面に生える w

    • 側面から横髪を生やすときには Y をオフにする

撫で付けフェーズ:櫛の強さを強めに変更して、頭蓋の輪郭に沿ってブラシを動かす

毛の長さにかかわらず、最初の状態では髪が放射状にタワシのように立っている。
これに櫛を入れて、少なくとも平坦に近い形にする必要があるのだが、冒頭述べたとおり髪と頭に当たり判定などはないので、櫛を頭から十分に離す必要がある。

また櫛の強さが標準の 1.0 のままだと、何度も操作しなければならず面倒臭い。

よって以下のようにする方がよい。

  • 櫛の強さを中ぐらい 5.0~最大10.0 にして、頭頂部 [7] から見て髪の流れを揃える
    • この段階では、ブラシは球状ではなく、投影の方がよい。
    • 3Dビューポートの表示は髪が見やすいソリッド表示モードに設定する。
    • 頭頂部から見て、少なくとも頭の輪郭の範囲内については正しく髪が拡がるように櫛を入れて、寝ぐせは一つもないようにする
    • アクティブツールで対象 - ミラー X、Y をオンにすると前後左右対称な放射状にするのは簡単になる。

      オフのままの場合には、乱れた感じの髪になる。

    • 髪が薄い場合は、カーブ形状のシェイプにチェックを入れてから追加する

    • 強い櫛で左右に梳いたため、正面から見るとペタンコになっている。頭頂部を表示し、つむじにマウスカーソルを合わせ、ブラシの大きさを頭より大きくして櫛の強さ最大10.0 でパフを何回かかまして盛り上げる
  • 櫛の強さを最大 10.0 にして、ボサボサの髪の流れを下方向に揃える
    • この段階では、ブラシは球状ではなく、投影の方がよい。
    • 3Dビューポートの表示は頭蓋の形が透けて見えやすいワイヤーフレームか、ソリッド表示モードに設定する。
  •  頭の輪郭に沿ってブラシを動かす
    • ブラシの有効範囲が円で示されている。その円が頭に触れないギリギリのところで櫛ブラシを操作する。
    • 櫛を動かす方向に髪が流れる。したがって頭頂部から右上(または左上、以下同じ)、右下、真下のように操作する。
      • 顔面メッシュへの髪カーブの食い込みは起こりにくい耳から下の髪を最初に真下方向へと揃える
      • アクティブツールで対象 - ミラー X をオンにすると左右対称にするのは簡単になる。オフのままの場合には、乱れた感じの髪になる。

        顔の輪郭が下膨れの場合には食い込む可能性があるので気を付ける
      • 頭頂部の髪はギリギリを攻めると髪が倒れすぎて禿っぽくなるので厚めにする
      • 正面が終わったら、背面。その後、右側頭、左側頭のように回転させながら櫛を入れる。
      • 真上から見ると四角いスイカ頭になっている。正面を向かせた後、髪カーブではなく頭部メッシュを選択し直して [r][z][30]などでちょっとずつ回しながら角を削る

      • ろくろ回しを行いながら、髪が寝て重力に従い下に流れた状態にする

      • うっかり頭に埋まってしまった場合には、[Ctrl][z]で直ぐ戻す。
      • ほとんどの埋まり問題は、生え際を櫛で持ち上げることで治るが、生え際がもう頭に埋まった場合などどうしようも無い場合にはパフというツールで髪を起こして頭皮上に復帰させる。ただし、かなりやり直しになる
    • 顔の前に垂れた前髪は、半径30とか小さめ、球状にして丁寧に梳く。髪のカーブの節を狙って動かす。
      投影のままだと後頭部まで梳かれてしまうため球状にする
    • 髪が薄い点は増毛で対処し、頭皮から髪の外面までの厚さと、髪の流れを正しくすることに集中する

ここまで行うと、最初の植毛で長さを適当に設定したため一部が長すぎたり短すぎたりする状態にはなっているが、髪は撫で付けられて寝た状態にはなっている。

マテリアルを追加してベースカラーを黒にすると髪の様子が分かる。

ここまでわずか1時間位しかかかっていない。もうこれで十分だ。

第2植毛フェーズ:髪が薄くて地肌が見えすぎている部分に植毛する

植毛する場所に合わせた髪の長さに設定してから、髪を追加して頭皮の地肌が目立たないようにする。最初から髪を多めにしてあれば、この工程は必要ないだろう。

  • ブラシの設定の中に、シェイプというチェックボックスがあるのでこれをオンにすると、植毛した毛(カーブ)が周りの毛(カーブ)と同じような曲がり具合、つまりは撫で付けられて寝た状態で追加されるので便利。
  • 植毛したさいに、周りの毛より微妙に浮き上がったり沈んだりすることがある。浮き上がった場合には、強さを 1.0 ~ 0.1 くらいに弱くしてから撫でつけると周りの毛と同じようになる。
    • この段階では、ブラシは球状にしてもよい
  • 植毛する場合には、ブラシのサイズに見合った毛の本数(密度)にすること。
    急にその部分だけ密林化した場合、[Ctrl][Z]ですぐに戻してやり直す。
  • 髪の量で何とかするのではなくて、生え際の地肌に黒でテクスチャペイントして地肌が目立たないようににするのも有効である。

トリミングフェーズ:髪の長さを調整する

耳が出るように髪を切ったり、長さが足りないところを伸ばしたりする。
あってはならぬ毛根を発見したときは、長さを調整するのではなく、削除する

  • 毛根の位置は正しいが、長さが不適切な場合は長さを調整する

これまでの作業で、毛根の位置と髪の流れ目が正しくなっていれば、概ね選んだブラシで操作したとおりに髪がカットされたり、伸ばされるはずだ。