まだ勝ち組がはっきりしないが、メタバース Metaverse に登場するアバター Avatar の標準化が進められている。
少なくともボーン Bone 配置・リグ Rig 配置・モーション Motion の種類など、人物モデル設計の根幹は標準に近い設計内容に近づけ、貧乏なアマチュアでも気兼ねなく使える無償の3Dモデリングツール Blender か何かで人物モデル(キャラ)を作ってみたい。
メタバースブーム再燃の背景
SF・RPG・箱庭生活ゲーム(セカンドライフ等)・CG映画でお馴染みの仮想世界への入り込みをとりあえず総括したバズワードがメタバースだが、ご家庭のパソコンで 精度の高い VR やらレイトレーシングやらが普通にできるようになってきたのでブーム再燃した。
そろそろまたセカンドライフ以来の金になりそうな好機到来と思ったのか、最近はコンサル会社などもクソ真面目なレポートを出している。
https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/column/opinion/pdf/13531.pdf
ここに載っている主なサービスやらゲームは一度は試したことがあるが、すぐ飽きた。3D酔いしてしまうこともあるが。
しかしセカンドライフってもう滅びたものと思い込んでいた...まだあったのね...
メタバースブーム定着の条件
企業も群がっており、堅物雑誌の経済界までメタバース特集が組まれてしまった。
セカンドライフで痛い目見たから皆デバイスの進化が条件だとか慎重である。
コンテンツホルダーは独自のメタバースプラットフォームを次々と作る方向のようだが、手持ちの映像資産を活かす発想だけなので早晩整理されてなくなりそうだ。
しばしばSFの設定であるように、リアル世界の物質的活動が全てロボット(機械)労働力で賄われて、人間が大脳のみの存在になれば、リアル世界よりもメタバースの方が人間(それは単なる大脳だけど)の住む世界に転化するのかもしれない。
リアル世界がロボット化しようとしまいと、現在すでに衣食住の調達に不安がなく、残りの人生は仮想世界でも構わない状態の未成年者・パラサイト・ミニマリスト・資産家などには、もう今からでも普及するかもしれない。
個人的にはストレスの少なさや楽しさで順序付けすると、
リアル生活>SF小説>CG映画>通販>MMRPG>箱庭生活ゲーム
の順となる。
やたら時間を使わされ目は疲れる肩は凝る尻はぢになる割に得るものはほぼないメタバースが実生活上で最重要ということは全然無い。今から未成年者・パラサイトに戻ることはできないが、衣食住を最低限にするミニマリストか衣食住に一生不安の無い資産家になれればメタバース沼にはまれるようになるとは思うが。
標準化が進んでいないことによる社会的損失
とりあえずメタバースと括ってみたものの、その中身は従来どおり競争状態で、仮想世界(環境)、物品、登場人物、貨幣の表現方法は様々である。したがってデータフォーマットやそれを扱うツールも様々となっている。
画像・動画・音声データのフォーマットなど低水準の標準はある程度定まっているが、上位の標準は例によって取り合いとなっているので、仮想世界、物品、登場人物のコンテンツ作成者は様々なフォーマットで同じようなアセットを制作せねばならない。
いちいち制作するという点については、仮想世界それ自体の創作や空想・妄想の楽しみのための物品・登場人物の創作であれば、それは小説・絵画と同じことで無駄とはいえないが、現実にある世界の環境・物品、登場人物の模写に過ぎないものについては、同一のアセットを幾つもの異なるフォーマットで作成することは無駄である。
標準化の方向性
仮想世界それ自体の創作はプラットフォーム構築であり、利用者個人で継続維持できる仕業ではないので、様々な企業が様々なタイプの仮想世界(プラットフォーム)を用意して、そこに利用者を集客することは免れない。
しかし登場人物(アバター)については、利用者本人の現実の姿または仮想の姿を現すものであり、使い分ける場合はあるにせよ、利用者が希望すれば、どのような仮想世界のタイプでも同じものを使えるようにすべきといえる。
このあたりの事情は、建設業界で物品のデータ(BIMオブジェクト)を過去にめいめいが勝手に作っていて、サプライチェーン全体では流通性がなく設計の手間が増えているのと同じである。
VRアバターの標準として何を仮定するか
住みたい仮想世界をどこにするのかによる。個人的には是非ここにという拘りはないので、VRアバターを使用するシーンとして以下を想定した。
- オンライン会議で自分自身の現実の姿に近いアバターを出してみる
オンライン会議のためにわざわざ身なりを整えるなどはしたくないが、さりとてアニメキャラというわけにもいかないので、超リアルなアバターを一体は作っておきたい。 - YouTube動画配信などで解説キャラとして仮想の姿のアバターを出す
動画に字幕を付けたり、合成音声をアテレコする作業にはかなり時間がかかる。もう動画作るのが嫌になるレベル。 身振り手振りはアバター、声はボイスチェンジャ(ボイチェン)にしてそれぞれチャネルを分けてリアル収録し、不要部分を後からカットするのが最も分かりやすく手間がかからないような気がしてきた。 - VRChat などチャットツールで仮想の姿のアバターを出す
Twitter、LINEすらロクに使っていないので VRChat を使う日が来るのかどうか不明だが、ゼスチャー抜きで文字のみで伝えたり、音声認識で正しく文字出力させたり、適切なスタンプを探したりするよりも、アバターの方が楽かもしれない。
仕事ならともかく余暇の雑談のために、身なりを整えるのも面倒だし。
大して時間をかけなかった調査の結果、VRMを参考にすることにした
全世界を網羅的に調べたワケでもないが、VRM 形式で作成されているものが多いようなので、それを参考にすることにした。
外観はアニメ調の萌えキャラが多いようだが、ボーン Bone の配置・リグ Rig の配置・モーション Motion の種類など、人物モデルの設計の根幹は参考になると考えた。
以前に Unity での利用を想定した場合の標準は調べたので、同様に VRMの場合を調査して、標準または傾向がどのようなものか特定してみることにする。
翌朝、VRMとしての標準の定義は5秒で見つかった
vrm standard rig でググってみたら早速見つかった。
- UniVRM という代物で Humanoid Avatar を作成できる
- ボーンについては Unity と同じだが、必須ではないボーンが4つある
人物モデルの設計仕様は
Unity の HumanoidAvatar を元に決めたのでだいたい同じ
とあり、その Unity においては、基本骨格のみが既定となっている。
HumanBodyBones - Unity スクリプトリファレンス
コレに合わせれば良い。
なお UniVRM は VRM 形式のファイルを Unity にインポートするためのアドオンらしいので、最終的には Unity で編集することになるらしい。そのやり方についてはほぼすべて書かれた記事が沢山あった。
但し、この方法は人物モデルを Blender で作る方法ではない。
VRM形式の人物モデルを Blender で編集するためには
本稿では、あくまでも Blender のみで作成することに拘っており、Unity や UniVRM は使用しない。
- Blender のアドオンの1つとして、VRM形式ファイルを入出力する VRM Add-on for Blender というものがあるので、まずそれをインストールする
※インポートだけなら VRM_IMPORTER アドオンでも可 - VRoidStudio で適当な人物モデルを作成し、VRM形式でエキスポートする
画面右上にあるアップロードボタンのメニューからエクスポート
- Blender で VRM をインポートして、モデルを編集する
VRM形式の人物モデルをアバターとして利用するためには
本稿では VRM を標準と仮定しているので、VRM 形式のアバターを受け入れることができるツール・ソフトウェア・サービスであればアバターを利用することができる。
VMagicMirror
少なくともオンライン会議やYouTube動画配信などでアバターを表示させることができるが、機能は豊富であり用途はこれに限られない。
Unity
Unity で使いたい場合には Blender から fbx 形式で Unity へエクスポートすることも一応はできる。
qiita.com
何回も変換すると何かと劣化が起こるのは当たり前なので、直接 Unity で編集する技能を高めるか、Blender 経由で変換して作るかは悩ましいところ。
VRChat その他の様々なメタバース世界
VRChat などチャットツールや様々なメタバース世界にアバターを出すことができる。用途はメタバース世界の世界観やら定義やらに準ずる。
ビジネス系
エンタメ系
現実には存在しない趣味全開の世界を集めているのが強みだろう。
すでにいろんなコミュニティがある中で、3Dワールドである必然性をどこに見出してマネタイズするかというと難しいが。
XR World は芸能イベント推しのようだ。
観光地系
観光地のリアル3Dコンテンツを投影できるのは強みだろう。
コストのかかる3Dコンテンツを作らされる観光地側からすると、ANA専用に作る動機は全くないが、Unreal Engine をベースとして認証・決済機能を追加したメタバース空間構築フレームワーク「PEGASUS WORLD KIT」なるものを採用しているようなので、一般的な3Dモデルの流用は当然考慮されているようである。
早晩消えそうな学習系
図鑑がコンテンツなので、動物園とか昆虫館とか水族館とかで推してくるものと予想。
入ってみたら何もないね…自社の雑誌の表紙が板ポリに貼られて沢山立っている。
アバターすらも雑誌の表紙で、サライアバターとかセンスを疑うレベル。
s-pace.land
図鑑は実物のコンテンツそれ自体が売りなので、惜しみなく精巧な3Dモデルを表示するわけにもいかないだろうから、何を売りにするのかビジネスモデルは難しそうだ。
小学校に普及している Google Classroom からすぐ行けるようにして、学校には3Dコンテンツを売り、授業の前後に小学生をたむろさせておけば小学生が興味をもつテーマのマーケティング位はできるかもしれない。
早晩消えそうな仮想店舗系
三越伊勢丹の店内にいつも居たい利用者なんていないだろう。
そもそも百貨店は経営状況が悪すぎて開発を継続できないだろう。
ほぼ本物の池袋同然に作り込まれた世界を予想したのだが…やたらギラギラした原色の板ポリがべたべたと貼られており、どこが注目点なのかすらもわからない。
コンテンツがない部分は灰色にでもしておいた方がよいのだろうが、そうするとゴーストタウンとバレて寂しいから誤魔化しているのだろう。店舗全部が参加する位でないと特定都市のミラーというコンセプトでは無理だろうが、プレイスを追加する際の仕様は不明だ。
Sims 4 の人物モデルを流用するには
3Dモデリングツールを駆使してフルスクラッチで高品質な人物モデルを作るのは最初はキツいので、何らかの人物モデルを流用した方が良い。
1千円くらいで安売りしていた Sims 4 の人物モデルを流用して作成した事例は以下のとおり。これはこれで十分キツいとは思うが、品質は Sims 4 とほとんど同等となった。
1か月間試行錯誤し、4時間で一体位流用できるようになった
表情に凝らず、トラブルなければ2時間でコンバートできる。